2014年6月19日木曜日

アルストム買収合戦の狙いはガスタービン。

https://surouninja.blogspot.com/2014/06/The-aim-of-Alstom-takeover-battle-is-its-own-high-end-gas-turbin-business.html
三菱重工・独シーメンス連合と米GEの「アルストム争奪戦」の背景には、今後の世界の主力電源となるであろう、「ガスタービンコンバインドサイクル発電」(GTCC)の急増を見越したガスタービンのシェア争いが在る。

三菱重工が世界再編の渦へ
アルストム争奪戦に参戦

2014年6月19日
http://diamond.jp/articles/-/54827

 欧米の間で巻き起こっていた世界的な重電業界の再編劇に、三菱重工業も名乗りを上げた。

 6月11日、仏重電大手アルストムのエネルギー部門をめぐって繰り広げられていた買収合戦に、独重電大手シーメンスと共同で提案を検討すると発表したのだ。

この争奪戦では、GEが攻撃側であるのに対し、三菱重工側はどちらかというと“守り”である。

GEは震災の1年前、自らの弱点であるハイエンドなガスタービンを手に入れるため、三菱重工との事業統合を提案している。この交渉では、中小型タービンの品揃えが弱点であった三菱重工側にとっても、巧く行けばメリットの在る交渉だったわけだが、この交渉は最終的に決裂している。GE側の提案がガスタービン事業全体の統合ではなく、三菱重工の持つハイエンドガスタービン部門だけの提携を要求したものだったからだ。

参考:
三菱重工・GE、幻の事業統合 「蜜月」に終止符

2011/4/5 7:00
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD0201Q_U1A400C1000001/

電力会社の発電設備に使われる大型ガスタービンは、GE、独シーメンス、仏アルストム、三菱重工が世界4強。世界の液化天然ガス(LNG)火力発電所の建設案件の受注で激しくしのぎを削っている。
 三菱重工は高効率・高出力の上位機種の開発で先頭を走るが、ボリュームゾーンの品ぞろえが弱いのが悩み。一方、GEは、ボリュームゾーンで幅広い製品を持ち、市場をがっちりと押さえているものの、ハイエンド製品の開発で出遅れた。「両社が組めば、最強連合ができる」――。三菱重工、GEとも総論では思惑が一致、具体的な提携交渉に入った。
だが、交渉を重ねるにつれ、提携のあり方についての両社の利害の不一致が次第に浮き彫りになる。関係者の話を総合すると、三菱重工は、両社のガスタービン事業全体の統合を提案。これに対し、GEは上級機種を対象にした開発・販売提携を主張した。
約1年前に交渉は打ち切られ、「ガスタービン世界最強連合」構想は幻と消えた。

そこで三菱重工を諦めたGEは今回、GTCC用ガスタービンの世界4大メーカー(GE、シーメンス、三菱重工、アルストム)の一社であり、三菱重工と同様にハイエンドガスタービンを保有する、「アルストム」を狙いに来たというわけである。

ちなみにアルストムが過去に保有していた中小型ガスタービン事業は、2003年の段階で既にシーメンスに譲渡済みである。今回シーメンスが三菱重工と共闘する理由は、GEとシーメンスのビジネス領域が被っているからに他なるまい。

参考:
Alstom - Wikipedia

2003 (April) Alstom sells its industrial turbine business (small to medium gas turbines 3-50MW, and steam turbines to 100MW) to Siemens for €1.1 billion.

上記のような理由から、「GEが“攻め側”で三菱重工が“守り側”である」と前述したわけである。

三菱重工としては、中小型ガスタービンのラインナップを持つGEがハイエンドガスタービンまで手に入れてオールマイティ化してしまうことを阻止したいのである。

参考:
2012年11月29日
発電システム産業における海外戦略 - Mizuho Industry Focus
http://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/mif_116.pdf

米国のシェールガス革命で天然ガス価格が安値で安定しているうちは、今後も米国は経済的合理性を考えて“原子力”から“ガス火力”へとシフトさせ続けるだろう。このような過程において、ハイエンドなガスタービンを制した企業が業界の王者になれることは目に見えており、GEのアルストム買収の狙いはまさにそこに在ると謂えよう。

しかも、原発や既存の火力発電に比べて、ガス火力発電は圧倒的に起動時間が速いため、不安定な再生可能エネルギーをバックアップする用途にも向いており、再生可能エネルギーとセットで伸びていくことも予想されるわけである。つまりガスタービンは、新興国だけで伸びが予想される火力発電や原発向けのタービンとは異なり、先進国での需要も十分に見込めるというわけである。

とはいえ、長期的にはガス火力が優位であり続けることはないだろう。ガス価格の不安定要素であるロシアや中東のエネルギー供給網や、米国のシェールガス輸出解禁により、今後はガス価格が値上がりすることはあっても下がることはまず無いと考えているからである。

参考:
2014年2月27日木曜日
ガス火力:損なわれる優位性。

そういうわけで、4大ガスタービン企業が全力でトップを取りに行くタイミングは、天然ガス価格が安値で安定している今しか無いものと思われる。アルストム買収合戦はまだまだ加熱し続けそうな予感である。

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